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2007年10月 8日 (月)

tainsより引用

下記は今年の8月の東京地裁判決(確定)の判決要旨をTainsから引用したものだが、至極当然の判示である。

著しく、とは法的にどんな範囲を指すのか、課税側の裁量で済む話ではない。ごく一般の市民の判断でおかしいものはおかしい。かといって、ガチガチにその範囲を法律で書くことも困難だし逆に意味がない。

この直前のブログで書いた思いがこの判決と直結している。今テレビで某早稲田の教授が社労士とか税理士とかの類、という発言をしていた。笑止千万である。生産性のないタレント学者は一昔前の知的生活のすすめとかを書いていた某教授と同じで、世の中のことを知らないのだから象牙の塔でひっそりとしていればいい。

幸い租税法の研究者、学者の多くの方々はそうではないことに感謝する。

今は亡きパバロッティのDVDを聴きながら・・・・・・・

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東京地裁 平成19-8-23    平成18年(行ウ)第562号贈与税決定処分取                  消等請求事件(全部取消し)(確定)(納税者勝訴)
 親族から土地の持分を買った原告らが、処分行政庁から、その購入代金額は相続税法7条の規定する「著しく低い価額の対価」であるから時価との差額は贈与とみなされるとして贈与税の決定等を受けたため、その取消しを求めた事案。
         判  示  事  項
1 相続税評価額と同水準の価額かそれ以上の価額を対価として土地の譲渡が行われた場
 合は、原則として「著しく低い価額」の対価による譲渡ということはできず、例外とし
 て何らかの事情によりその土地の相続税評価額が時価の80パーセントよりも低くなっ
 ており、それが明らかであると認められる場合に限って、「著しく低い価額」の対価に
 よる譲渡になり得ると解すべきである。
2 仮に時価の80パーセントの対価で土地を譲渡するとすれば、これによって移転でき
 る経済的利益は、その土地の時価の20パーセントにとどまるのであり、被告の主張す
 るように「贈与税の負担を免れつつ贈与を行った場合と同様の経済的利益の移転を行う
 ことが可能になる」とまでいえるのか、はなはだ疑問である。そもそも、被告の上記主
 張は、相続税法7条自身が「著しく低い価額」に至らない程度の「低い価額」の対価で
 の譲渡は許容していることを考慮しないものであり、妥当でない。
3 相続税法7条は、当事者に実質的に贈与の意思があったか否かを問わずに適用される
 ものであり、実質的に贈与を受けたかどうかという基準が妥当なものとは解されない。
 この基準によるとすれば、そのすべての場合において、実質的に贈与を受けたというこ
 とにもなりかねず、単なる「低い価額」を除外し「著しく低い価額」のみを対象として
 いる同条の趣旨に反することになるというべきである。
4 第三者との間では決して成立し得ないような対価で売買が行われたか否かという基準
 も趣旨が明確でない。仮に「第三者」という表現によって親族間やこれに準じた親しい
 関係にある者相互間の譲渡とそれ以外の関係にある者相互間の譲渡においては、たとえ
 「著しく低い価額」の対価でなくても課税する趣旨であるとすれば、同条の文理に反す
 るというほかない。
5 被告は本件土地については、賃貸人と賃借人との間に家族関係を基礎とした密接な関
 係があることをその主張の根拠とするようであるが、たとえそのような密接な関係があ
 るとしても、賃借人が賃貸人から独立した人格を有する会社であることを一概に否定す
 ることはできない。
6 特に本件土地上の各建物は原告ら家族とは全く関係のない第三者に賃貸されているこ
 とが認められるから、本件土地の取引に当たっては借地借家法等の法律上の制約が存在
 することが重要な考慮要素となると認められ、自用地としての価額から20パーセント
 相当額を控除することは、正当な評価方法というべきである。
7 当事者に贈与の意思や租税負担回避の意思があったか否かによって相続税法7条のみ
 なし贈与の適用が左右されることはないのであるから、売主の側の意思、意図を強調す
 る被告の主張は採用することができない。
8 負担付贈与通達にいう「実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうか」と
 いう判定基準は、同条の趣旨にそったものとはいい難いし、基準としても不明確であり、
 「著しく低い」という語からかけ離れた解釈を許すものとなっており、その意味で妥当 なものということはできないが、結局のところ、個々の事案に応じた判定を求めている のであるから、上記のような問題があるからといってそれだけで直ちにこれを違法ある いは不当であるとまではいえないというべきである。もっとも、個々の事案に対してこ の基準をそのまま硬直的に適用するならば、結果として違法な課税処分をもたらすこと は十分考えられるのであり、本件はまさにそのような事例であると位置づけることがで きる。
9 以上の検討によれば、本件各売買に相続税法7条を適用することはできないというべ
 きである。

27%の意味

今年の6月に東京国税局が公表した管内租税訴訟係属にかかる国側一部または全部敗訴の割合である。17年度は7%だったので、明らかに司法の姿勢が変わってきているのと、同時に課税庁が敗訴もあり得る訴訟覚悟の課税を行ってきている証拠でもある。

何も訴訟を推奨し、訴訟覚悟を納税者に強いるつもりはないので、我々は日頃の税務判断、タックスコンサルタント(単なる節税ではなく、こうすれば現行税法の枠の中で合法的に取引や行為をなし得る、というスキームづくり)にこそ、現状の司法の判断を大いに活用し、クライアントとともに知恵を絞る時代に入ってきたことを実感し、実践しなければならないということである。

法理論的裏付けもなく、声の大きさや、駆け引きで物事を決めようとする姿勢は所詮前例や先例とはなり得ない。法の世界に生きる立場を自らが放棄していることを知らずに「実務」という、得たいのしれない一種の馴れ合いですべてを動かせるという時代は終わっている。専門家、しかも法律専門家と自称するならば、取引、行為の前にその法的要件を後で誰にも論破されないように固めておくのが常識である。

訴訟はその後で、法的要件、要件事実の認識の相違が表面化するのであって、法的に何も準備しないで、前もよかったからいいんじゃないか、とか、実務では通っているから、などのレベルの仕事だけはしたくないし、クライアントに対する債務不履行でもあろう。

ここに経験、という大きな問題がある。経験の軽重、運の良さで何事もなく済んできた会計人は幸せ?である。自己実現が人生の目標ならば不幸ではあるが・・・・・

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