« 2009年12月 | トップページ | 2010年2月 »

2010年1月21日 (木)

土地税制2題

 昨年の旧政権時代の税制改正で、特定土地等を今年と来年取得して、5年後以降に売却したら売却益から特別控除1千万円、というのが出来た。これは個人、法人も同様に対象となる。

 もう一つ租税理論的は馬鹿げた先行取得資産の土地等の特例が出来たが、馬鹿げているので触れない。ただ、これは仮に特例の適用を受ける場合は、土地等を2年間に取得した場合にその特例対象とする旨の届出を税務署長にしておかなければ後で使えないから、何はともあれ、昨年、今年と国内土地等を取得する場合は届出をしておいた方が無難である。

 いずれも、冷え切った不動産市場の活性化、土地取引の流動性を高め、関連する業種の業績向上を意図したものであるとされている。

 さて、1千万円の特別控除制度だが、5年後以降に土地等が値上がりしてるかどうか、神のみぞ知る世界に期待するしかないし、減税効果など今からは測定不可能だから減税の一環などと言われる筋合いのものではない。

 そもそも、この制度を作った意図に適応していないことは明らかだ。土地等の取引は売り手と買い手があって成り立つものであり、買い手に神のみぞ知る特典を与えるだけでは売り手は動くはずがない。

 特に個人の売り手は平成16年改正で、譲渡損失の損益通算を不可にされ、遡及適用された。よほどの事情がなければ税制を考慮しての売却などするわけがない。売り手に何のインセンティブも与えずに、さぁ、土地等を買え、買ってから5年経過後の譲渡には美味しい特典があるぞ、といっても、売り手には関心がないから取引は成立しない。

机上の空論の見本である。

もう一つ。

それは未だに廃止されない不動産所得等の計算における取得土地等にかかる負債利子の損金不算入制度。そもそもバブル時に節税タイプのスキームとして無節操かつ合理性なき土地投資が行われた経過があり、その行き過ぎを是正する趣旨のものであった。

 確かに税制として、それなりのバブル沈静の効果の一翼を担ったとは言えるが、未だにこの制度が手つかずのまま放置されている。

 20年もたち、とっくに時代も市場も変わったのに制度を変えないという不作為があり、立法府の責任といえる。

 一方では売り手を無視して特例恩典を与えるからどんどん買えといい、かたや20年も前の取引規制の制度を存置したまま、という政策の一貫性が全くない税制。

 今後どの政権党になっても、増税の前に徹底的な行財政の無駄排除、というのが基本スタンスと言われているが、税制改革は増税とはイコールではない。あるべき税制、国民つまりは納税者が理解し、納得でき、時代との整合性をもった制度を目指すべきものである。

 制度趣旨が逆行する内容と、神の世界に期待する税制はもはや国民のものではない。

2010年1月18日 (月)

法人会さん?・・・金持優遇?

つい最近の法人会さんの会報を読んだ。某萩原H子さんのコラム。

大笑い・・・どころか何を考えてるのか、考えてないのか。

昔から国語、文章というのは、最初と最後を読めば分かる、と教えられてきたし、今も大学院生の論文も同じだとつくづく思う。

で、その読み方をしてみましょう。「不況の中で、住宅ローンで破滅する人が増え続けています。~まず正直に実情を話してみましょう」

問題はその後。

どんどん繰上返済をすすめましょう。そうすればボーナス払いは0になります!

そして最後。

「繰り上げ返済には、返済期限を縮める方法と支払額を減らす方法がありますが、効果的なのは、返済期間を縮める方法です。「

どうしてこんなのが今の日本人に効果があるのでしょうか?

O博士の言うとおり出来る人間がどれだけいるのでしょう?今の住宅ローンの残高をO博士はご存じ?

アメリカのサブプライムローン問題をはるかに超える危機、をご存じ??????

どう少なくても180兆あるのご存じでしょうか?貴女には関係ない世界ですからマクロですむんでしょうね。

ローン残を抱えているのはごく一般的な、しかも巨額ではないでしょうが、貴女の世界の財務状態とは全く違う人たちなんですよ。

繰り上げしろ、というなら貴女がスキームを作りなさい!!できもしない、デスクの上だけの、こうすれば何とかなるじゃない?というちゃちな生活はテレビで今のうちだけ話していれば済むだけのものですね。

まもなくマスコミも相手にしなくなったときの、貴女の生き様、そしてそれは、貴女がこうしなさい!と言っていた人たちに何の役にも立っていないし。、貴女自身にも何の意味もなかったことを、どこかの飲み屋で知って下さい。

みんな、生きているんです。貴女のちゃちな価値観で生きているんではありません。目の前から誰もいなくなった、そんな世界でもみんな生きています。貴女も今に・・・・

2010年1月17日 (日)

あの日・・・・・・・

阪神・淡路大震災から15年。未だに終わらない、終わるはずもない思いの如何に多いことか。何故?も、理屈もないあの出来事は、この国で昔から繰り返されたのに、歴史としてしか評価しない人の悲しさなのか、途方もない人類の繰り返しなのか。

あの出来事前の神戸、とても好きな街の風景や神戸でしか触れ得ない空気があった。ちょうど当日は東京出張で朝一便か二便で羽田に着き、何かがあったらしいという情報を聞きながら、何故かざわついた東京で会議に向かった。

関西から来るはずの数人が動けない、という。動けないとはどういうことなのか想像もつかなかった。その日は赤坂のホテル泊まりで部屋に入り、テレビをつけた途端に、なんじゃ、これは!という映像に食事も忘れた。

15年。歴史の流れでは瞬間にもならない時間しか経っていない。過去のものでなどある訳がない。逝ってしまった人、残された人、残ってしまった人、そしてその後逝った人。

怒りをぶつけられる人はまだ良い。ぶつけようもない人々・・・・・

9.11のあの映像を夜直接テレビで見たが、次の日、やはり飛行機に乗っていた。羽田に着陸したときは当たり前のことがこれほど安全なことなのか、と思った。

あの日・・・・・・

その日はいつやってくるのか誰にも分からない。

2010年1月 1日 (金)

開業30年、寅年

30歳で独立したのでもうあれから30年になる。試験合格は24歳だったので36年、税で生きてきた。概ねの税理士さんに聞くと受験勉強に苦労されていて、それは私も同じだが、何故か税法や会計学、簿記と並行して憲法や民法を読んでいた。どうしても税法だけのテクニック論に没頭出来なかった。

税の実務は、租税法原則とは別の世界であり、政策でいじくり回され、ファッションの流行と同じでいきつ戻りつ繰り返されてきた。

元旦の地方新聞の一面は札幌の路面電車延伸の記事で、大事件ではないが違和感を感じてしまう。昔の路線はカットされ続け、それは車社会の到来に備えたものであったが、今は環境優先、CO2削減で中心部への車乗り入れを減少させるための延伸。

たった数十年の間に政策と社会の価値観が変わり、繰り返しが始まる。税も同じで行きつ戻りつ、政策で動く。

では租税原則は一体どこにあるのか、どこにもないのか、租税法通説が現実と政策、司法判断を後追い正当化している現実の中で、何が不易流行たり得るのか。

学者の遊び、といっては失礼だが、抜本的税制改革、という言葉をこの10年くらい聞き続けてきた我が国で租税法学者は答えを出していない。

オランダ、フランスの税制がベストとは思っていないが、なるほどねぇ、という課税基準を生み出している現実を無視してはならないのだろう。首尾一貫性は感じられないが、税の持つパワーを実現させようという発想が小気味よい。環境税の発想も合理的な案を用意している。走行距離で課税という発想は日本では聞いたことがなかった。

これならいいな、という税制、誰がいつつくれるのか。ホントは来年にでもつくれるはず。

シャウプはアメリカ税制を否定して勧告を書いたはずだ。

過去の否定から税制の骨格を作り直す絶好の機会の年に入ったことを、肝に銘じて学者も政治家も、そしてなにより納税者が声をあげて実現可能性を追求しなければ政権交代の意味がない。

所得税(相続税などもその一つと捉えちゃえば簡単なこと)か、消費税か。

適当なところで折り合いをつけているとEUに負け、中国にも負け、世界の貧困国で甘んじている道しか残っていない。

デフレが日本だけで起きていることを考えると、国境を税が決めている、という側面を忘れてはならないのだろう。

思いつきの理屈より、税、本来の力を信じることから租税法の再構築が始まる。

元旦から過激でした。あけましておめでとうございます。

« 2009年12月 | トップページ | 2010年2月 »