土地税制2題
昨年の旧政権時代の税制改正で、特定土地等を今年と来年取得して、5年後以降に売却したら売却益から特別控除1千万円、というのが出来た。これは個人、法人も同様に対象となる。
もう一つ租税理論的は馬鹿げた先行取得資産の土地等の特例が出来たが、馬鹿げているので触れない。ただ、これは仮に特例の適用を受ける場合は、土地等を2年間に取得した場合にその特例対象とする旨の届出を税務署長にしておかなければ後で使えないから、何はともあれ、昨年、今年と国内土地等を取得する場合は届出をしておいた方が無難である。
いずれも、冷え切った不動産市場の活性化、土地取引の流動性を高め、関連する業種の業績向上を意図したものであるとされている。
さて、1千万円の特別控除制度だが、5年後以降に土地等が値上がりしてるかどうか、神のみぞ知る世界に期待するしかないし、減税効果など今からは測定不可能だから減税の一環などと言われる筋合いのものではない。
そもそも、この制度を作った意図に適応していないことは明らかだ。土地等の取引は売り手と買い手があって成り立つものであり、買い手に神のみぞ知る特典を与えるだけでは売り手は動くはずがない。
特に個人の売り手は平成16年改正で、譲渡損失の損益通算を不可にされ、遡及適用された。よほどの事情がなければ税制を考慮しての売却などするわけがない。売り手に何のインセンティブも与えずに、さぁ、土地等を買え、買ってから5年経過後の譲渡には美味しい特典があるぞ、といっても、売り手には関心がないから取引は成立しない。
机上の空論の見本である。
もう一つ。
それは未だに廃止されない不動産所得等の計算における取得土地等にかかる負債利子の損金不算入制度。そもそもバブル時に節税タイプのスキームとして無節操かつ合理性なき土地投資が行われた経過があり、その行き過ぎを是正する趣旨のものであった。
確かに税制として、それなりのバブル沈静の効果の一翼を担ったとは言えるが、未だにこの制度が手つかずのまま放置されている。
20年もたち、とっくに時代も市場も変わったのに制度を変えないという不作為があり、立法府の責任といえる。
一方では売り手を無視して特例恩典を与えるからどんどん買えといい、かたや20年も前の取引規制の制度を存置したまま、という政策の一貫性が全くない税制。
今後どの政権党になっても、増税の前に徹底的な行財政の無駄排除、というのが基本スタンスと言われているが、税制改革は増税とはイコールではない。あるべき税制、国民つまりは納税者が理解し、納得でき、時代との整合性をもった制度を目指すべきものである。
制度趣旨が逆行する内容と、神の世界に期待する税制はもはや国民のものではない。
最近のコメント