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2010年7月 7日 (水)

んー、二重課税。もっとあるなぁ・・・・・

二重課税、という言葉の定義も色々あるけど、今日の最高裁は極めて合理的かつ法律的な解釈をしたと思う。

何十年も通達に書いてあるからと疑う気持ちも若干有りながら声をあげてこなかったことに猛反省!長崎の税理士さん、さすが!!!!

相続税がひっくり返るような判決になりうる、ってことに気がつかなきゃ専門家、法律家じゃないね。しかたないよ、あるんだから。というのが一番困る。

出来たものはいつでもなくなる。無くさなければならないものもある。これくらいの気持ちで納税者と一つの気持ちのならないと、いつまでもセンセーと呼ばれるバカで終わる。

さて5年の還付、と言う説が多いし、現実的にはそうなると思うが、公務員の通常の注意義務は崩す気もなく、国賠法の20年も使わせる気のない判決だとは一応批判。

それにしても、非課税の所得から源泉徴収しても適法なんだね。本来は違法であるが、くらい書いて欲しかったけど、そうすると行政への影響が大きくなりすぎるから?やはり行政優位主義が???

最高裁HPから(こういう判決文のアップは早いなぁ・・・)

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主    文

原判決を破棄する。

被上告人の控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理    由

上告代理人丸山隆寛,上告復代理人山内良輝の上告受理申立て理由について

以下に摘示する相続税法及び所得税法の各規定は,それぞれ別表記載のものをいう。

1 本件は,年金払特約付きの生命保険契約の被保険者でありその保険料を負担していた夫が死亡したことにより,同契約に基づく第1回目の年金として夫の死亡日を支給日とする年金の支払を受けた上告人が,当該年金の額を収入金額に算入せずに所得税の申告をしたところ,長崎税務署長から当該年金の額から必要経費を控除した額を上告人の雑所得の金額として総所得金額に加算することなどを内容とする更正を受けたため,上告人において,当該年金は,相続税法3条1項1号所定の保険金に該当し,いわゆるみなし相続財産に当たるから,所得税法9条1項15号により所得税を課することができず,上記加算は許されない旨を主張して,上記更正の一部取消しを求めている事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 上告人の夫であるAは,B生命保険相互会社(以下「B生命」とい。)

 との間で,Aを被保険者,上告人を保険金受取人とする年金払特約付きの生            命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し,その保険料を負担していたが,平成14年10月28日に死亡した。上告人は,これにより,本件保険契約に基づく特約年金として,同年から同23年までの毎年10月28日に230万円ずつを受け取る権利(以下「本件年金受給権」という。)を取得した。

上告人は,平成14年11月8日,B生命から,同年10月28日を支給日とする第1回目の特約年金(以下「本件年金」という。)として,230万円から所得税法208条所定の源泉徴収税額22万0800円を控除した金額の支払を受けた。

(2) 上告人は,平成14年分の所得税について,平成15年2月21日,総所得金額22万7707円,課税総所得金額0円,源泉徴収税額及び還付金の額2664円とする確定申告をし,次いで,同年8月27日,総所得金額37万7707円,課税総所得金額0円,源泉徴収税額及び還付金の額22万3464円(本件年金に係る源泉徴収税額22万0800円を加算した金額)とする更正の請求をしたが,これらの確定申告及び更正の請求を通じて,本件年金の額を各種所得の金額の計算上収入金額に算入していなかった。

他方,上告人は,Aを被相続人とする相続税の確定申告においては,相続税法24条1項1号の規定により計算した本件年金受給権の価額1380万円を相続税の課税価格に算入していた。

(3) 長崎税務署長は,本件年金の額から払込保険料を基に計算した必要経費9万2000円を控除した220万8000円を上告人の平成14年分の雑所得の金額と認定し,平成15年9月16日,総所得金額258万5707円,課税総所得金額219万円,源泉徴収税額22万3464円,還付金の額4万8264円とする更正をし,次いで,同16年6月23日,所得控除の額を加算して課税総所得金額を32万円に減額し,これに伴い還付金の額を19万7864円に増額する再更正をした(以下,この再更正後の上記更正を「本件処分」という。)。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判示し,本件処分は適法であると判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

所得税法9条1項15号は,相続,遺贈又は個人からの贈与により取得し又は取得したものとみなされる財産について,相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除する趣旨の規定である。相続税法3条1項1号により相続等により取得したものとみなされる「保険金」とは保険金請求権を意味し,本件年金受給権はこれに当たるが,本件年金は,本件年金受給権に基づいて発生する支分権に基づいて上告人が受け取った現金であり,本件年金受給権とは法的に異なるものであるから,上記の「保険金」に当たらず,所得税法9条1項15号所定の非課税所得に当たらない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) ア所得税法9条1項は,その柱書きにおいて「次に掲げる所得について

は,所得税を課さない。」と規定し,その15号において「相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続,遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)」を掲げている。同項柱書きの規定によれば,同号にいう「相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」とは,相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく,当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして,当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは,当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず,これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから,同号の趣旨は,相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして,同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。

イ相続税法3条1項1号は,被相続人の死亡により相続人が生命保険契約の保

険金を取得した場合には,当該相続人が,当該保険金のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を,相続により取得したものとみなす旨を定めている。上記保険金には,年金の方法により支払を受けるものも含まれると解されるところ,年金の方法により支払を受ける場合の上記保険金とは,基本債権としての年金受給権を指し,これは同法24条1項所定の定期金給付契約に関する権利に当たるものと解される。

そうすると,年金の方法により支払を受ける上記保険金(年金受給権)のうち有期定期金債権に当たるものについては,同項1号の規定により,その残存期間に応じ,その残存期間に受けるべき年金の総額に同号所定の割合を乗じて計算した金額が当該年金受給権の価額として相続税の課税対象となるが,この価額は,当該年金受給権の取得の時における時価(同法22条),すなわち,将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し,その価額と上記残存期間に受けるべき年金の総額との差額は,当該各年金の上記現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当するものとして規定されているものと解される。したがって,これらの年金の各支給額のうち上記現在価値に相当する部分は,相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものということができ,所得税法9条1項15号により所得税の課税対象とならないものというべきである。

ウ本件年金受給権は,年金の方法により支払を受ける上記保険金のうちの有期

定期金債権に当たり,また,本件年金は,被相続人の死亡日を支給日とする第1回目の年金であるから,その支給額と被相続人死亡時の現在価値とが一致するものと解される。そうすると,本件年金の額は,すべて所得税の課税対象とならないから,これに対して所得税を課することは許されないものというべきである。

(2) なお,所得税法207条所定の生命保険契約等に基づく年金の支払をする者は,当該年金が同法の定める所得として所得税の課税対象となるか否かにかかわらず,その支払の際,その年金について同法208条所定の金額を徴収し,これを所得税として国に納付する義務を負うものと解するのが相当である。

したがって,B生命が本件年金についてした同条所定の金額の徴収は適法であるから,上告人が所得税の申告等の手続において上記徴収金額を算出所得税額から控除し又はその全部若しくは一部の還付を受けることは許されるものである。

(3) 以上によれば,本件年金の額から必要経費を控除した220万8000円を上告人の総所得金額に加算し,その結果還付金の額が19万7864円にとどまるものとした本件処分は違法であり,本件処分のうち総所得金額37万7707円を超え,還付金の額22万3464円を下回る部分は取り消されるべきである。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上告人の請求には理由があり,これを認容した第1審判決は結論において是認することができるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官那須弘平 裁判官堀籠幸男 裁判官田原睦夫 裁判官

近藤崇晴)

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